左下の奥歯が腫れていらした患者さんでした。投薬とその後の歯周基本治療で症状は緩解しました。以前からの患者さんで15年前には私が右側にサイナスリフト(インプラントを行う上で骨が足りない場合、副鼻腔内に造骨する処置)を行い、インプラントを入れた方でした。当時は当院にCTがなく(というよりは全国的に一般歯科医院にCTがない時代でした)大学病院にCT撮影を依頼していました。まだアナログフィルムの時でした。その後奥様も患者さんとしてご紹介いただき、サイナスリフトを行いインプラントを入れた経緯があります。インプラント治療後も、しばらくは欠かさずメンテナンスでお見えになってきましたが。今回は1年以上間隔があいてしましました。現在、ご本人は80歳近い方でしたが、とくに持病があったりして薬を飲んでいるわけでもない状態でした。歯肉の腫れは落ち着きましたが、再発を防ぐ意味と失われた組織の再生の目的で歯周組織再生療法の話をしたところ、「元気なうちに再生療法をやってください」とのことでした。当院は10年以上前にCTを導入し、昨年新しい機種にバージョンアップしました。そのCTで3次元的な骨吸収状態を確認しました。術前に手術のイメージをつくる(どのような切開線で行うかなど)には、2次元のレントゲンと歯周ポケット測定により、ある程度可能ですが、3次元のCT情報が加われば更に明確になります。骨再生薬剤と骨補填材を併用しました。骨再生薬剤は今回は国産のリグロスを用いました。骨吸収の周囲に骨壁があったので再生療法の適応症例でした。歯周病が進行すれば、該当する歯だけでなく隣のインプラントにも影響する可能性がありました。術後1年で歯周ポケットが10㎜から3㎜に改善しました。年齢的なことを考え、リエントリー(もう一度、歯肉を切開し骨再生状況を確認し必要があれば骨整形を行うこと)はしませんでした。来月の福岡で行われる2日間のセミナーはコンベンショナルな再生療法を確実に行うための模型実習、低侵襲型の再生療法2種類の模型実習が予定されているようです。数年前の手技、考え方からどう変化してきているか楽しみです。毎年行われる定例会で内容的には講義で聞いているのですが、実際に手を動かして初めてイメージがつかめる気がします。どんな世界でも変わらないということは後退を意味します。年は重ねつつも頭が固くならないように毎日が勝負だと思っています。
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