ご覧いただきありがとうございます。人の顔や体格が一人一人違うように、インプラントを入れる足場である骨の条件も人によって様々です。上のレントゲンは上の奥歯を失った患者さんの例です(下には私が20年以上前に入れたインプラントが入っています)。抜歯した後は大きく骨を失っていて、直上には副鼻腔が広がっています。ここは空気が入っている場所なのでインプラントの足場にはなってくれません。インプラントを入れるためには抜歯窩と副鼻腔内に造骨が必要でした。CTでは副鼻腔内が複雑な構造をしていたのが見て取れました。副鼻腔内造骨手術は2002年に米国ミシガン大学の短期研修ツアーで学んだ技術ですが、何故か解剖学的に何の障害もなく楽にできそうなケースは20年やってきた中で非常に少ない気がします(もうあれから20年かあ)。副鼻腔内造骨には副鼻腔の外側の骨に窓開けという操作を行います。窓開けのデザインをどうするかは成功の鍵とも言えます。骨内の血管の走行を把握し、それを損傷しないような窓開けラインが必要です。また骨幅が薄いところをラインとする方がストレスが少なくてすみます。副鼻腔内には隔壁と呼ばれるエッジが鋭い骨壁が走行している場合があり、これを上手く考慮しないと失敗の原因になりかねません。また一定以上の窓の大きさが無いと、その後の器具の操作が不可能になります。患者さん一人一人、違う条件の中でこれらの項目を考慮しなければならないので、経験が20年経った今も一例一例気が抜けません。副鼻腔内造骨手術から骨が熟成するのは約半年をみています。それから人工歯根部を入れ、骨と引っ付くのを3か月待ち被せ物を作っていきます。従って患者さんがインプラントで咬む状態にもっていくのは副鼻腔内造骨手術から9か月程度かかることになります。
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