インプラント周囲炎の謎

先日の学会で、韓国の先生がインプラント埋入後1年程度で脱落した症例を提示した。埋入位置、方向、咬合、清掃状態など問題は認められないのもかかわらず、「なんでこんなに完璧にやっているのに」と思わずにはいられない症例報告であった。

文献的にも、真の原因ははっきり言って分かっていないと言っていい。原因が分からないので、防ぐ手立てはメンテナンス時のクリーニングと咬み合わせの調整くらいしかない。期せずして発生した場合には、歯肉を切開してインプラント表面の洗浄、インプラント周囲の溶けた骨を補填するための材料設置、最近は光で殺菌するレーザーのようなものも推奨されてきている。これらの策を講じて骨の破壊が止まったり、骨が再生することもあれば、骨破壊が止められず、撤去を余儀なくしなければならないケースもある。

とあるインプラントメーカーに協力してもらって、脱落したインプラントをホルマリンに保存し、標本上で光学顕微鏡レベルと電子顕微鏡レベルで調べてもらった。その報告書が数日前に送られてきた。検体の一部にハイドロキシアパタイトでもなく、骨組織でもなく、繊維組織でもない、付着物が認められた。これが一体何なのか。考察はこれからというところである。97パーセントの成功率とはいっても、インプラント周囲炎の原因がもっと明らかになってほしいものである。(長谷川)

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