米国歯周病学会誌からトルコのとある大学歯学部の論文。上顎奥歯にインプラントを入れたい場合に、骨が足りなくて副鼻腔(頭蓋骨にある、鼻と交通していて空気が入っている空洞)の中に造骨する手術をサイナスリフトと呼んでいる。副鼻腔の一番外側は骨、その骨の内側に膜がついていて、更にその内側は空気である。サイナスリフトは副鼻腔の横っ腹の骨をマンホールのようにくりぬいて、内側の膜を破らないように骨から剥いでいく。骨の内側と剥がした膜とのスペースに骨補填剤をつめて骨に置き換わるのを待つ。その後インプラント埋入となる。(サイナスリフトのブログ参照)
この論文の主旨は、歯肉の薄い人は膜も薄い傾向があるので破らないように注意が必要だとか、骨が薄い人は膜も薄い傾向があって膜を破りやすいなどと、44人のサイナスリフトを行った患者から結論付けている。このことは福岡の手術の神様Y先生が、かなり前から言われていたことであり、さして目新しことではない。自分の経験では、膜が厚くても破ったことがあり(吸収性膜で修復して事なきをえた)、それ以来、膜が薄かろうが厚かろうが、どんな症例でも侮らないようにと、事前に生卵でウオームアップを自分に義務付けている。改めて心に警鐘を鳴らす意味では、意味のある論文だったかもしれない。
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