抜歯と言われて喜ぶ方はいないのが通常です。末期的な状態であっても何とか残せないかと訴える方は少なくありません。地方だとそんなこともなく「治療なんて面倒だから抜いてくれ」という傾向がある話も時折聞きますが、当院はそういうわけにはいきません。そんな状況で30年以上診療してきました。今回のケースは前歯の差し歯が折れて脱離してきた女性の患者さんです。残った根っこを見て、「あまりもたないかもしれないが、何とか残してみましょう」と説明しようとしました。ところが、以前に10年以上前に私がこの方に左下にインプラントを入れていて別に問題が無かったせいか、「先生、何言ってるの。さっさと抜いてインプラントにしてよ」と言われてしまいました。まあ、そのほうが予知性は高いですが。前歯のインプラントの手法は様々です。抜く歯を敢えて矯正で引っ張り上げてから抜く方法は代表的ですが、時間も手間も費用もかさみます。今回は抜歯して2か月待ち骨造成してから埋入する事にしました。ゴールまで時間はかかりますが、石橋を叩いて渡る方式でエラーは少ないと思います。骨吸収している部分をどういう材料で再建するかは様々な情報がありますが、今回は直近でズームを通じた学会の講演をもとに、材料を選択しました。今まで使用していた物より再生した骨の質がいいとの事だったからだ。昔のやり方や材料に固執せず、常にあてになる情報を取り入れてより良い結果をだしていきたいものです。
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