AED(自動体外式除細動器、写真参照)は心臓マヒを起こして倒れた人を、そこにいる人たちがその場で使って倒れた人の命を救うための器械である。空港や飛行機内、ホテルなどの公共施設に広く設置され、消火器などと同等に、万日の事態が発生した場合にはその場に居合わせた人が自由に使えるようになっている。かつては医師しか使用が認められていなかった。当診療所にも歯科を含めた各部署に設置済みである。
2009年に開催された東京マラソンで、ランナーとして出場していたタレントの松村邦洋がスタート地点から約15キロ付近で突然倒れ、一時心肺停止状態になった。伴奏していた救護班がAEDを使用するなど対応が早かったため意識はすぐに回復し、命に別条はなかったという話がある。
また、テレビ東京系列で放送されている「開運!なんでも鑑定団」の収録スタジオ内に、今年からAEDが設置された。特定のテレビ番組のためにAEDを設置した初めての事例で、これは同番組の性格上、高齢もしくは心臓に何らかの持病がある出演者(依頼人等)が、鑑定結果にショックを受けて、万が一の事態が発生した場合等を考慮したものだという。
AEDは音声ガイド機能がついており、これに従えばいいことになっており、使用に当たっては、さほど困難はない。電気ショックが必要ない場合には作動しないようになっている。問題は、AEDの使用前に心肺蘇生を行うこととされていることである。すなわち、マウストゥマウスで呼気を送りこんでやることと、心臓マッサージである。
ところが、最新号TIMEの記事によれば、AED使用前の心肺蘇生にはマウストゥマウスの人工呼吸は必要なく心臓マッサージだけでOKとのガイドラインがアメリカでつくられるようだ。50年もの間、蘇生は同じやり方で行われてきた。しかし、最近の研究では心臓マッサージのみでも蘇生効果に有意差はないとのことが報告されている。米国心臓協会がガイドラインを更新中とのことである。このガイドライン変更には社会的理由と医学的理由があるという。社会的理由とは、心臓発作で倒れた人のうち3分の1は、その場に居合わせた人から蘇生をされなかったというデータの存在である。その主な理由は居合わせた人が、正しく呼気を送り込むことに自信がもてないことと、気持ち悪がったことであるという。医学的理由とは、先に述べた通りである。
当歯科診療所の強みは医科があることである。私が22年勤務してきた中での経験であるが、とある患者さんが、抜歯後もケロッとしていたのだが、「ありがとうございました。」と言って立ち上がった瞬間、バッタと倒れてしまわれた。すぐに医科の看護師さんが駆け付け、数分で事なきを得たのだが、ふだん滅多にない事に、いざという時、頼れる看護師さんや口腔外科専門医が当院にいることは心強い。幸いにも、今のところ現場でAEDのお世話にはなっていない。
このブログを書いていた矢先、我が家の癒し系ペット「ふうちゃん」が心肺停止となり、3年の短い生涯をとじた。残念ながら、ハムスター用のAEDは無い。合掌。
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