歯科の日常臨床では当たり前の様に使用されている抗生物質。海外の文献では、「抜歯や歯周外科後に抗生物質を処方するのは意味がない。」とするものが、前回の勉強会で取り上げられた。
2つ論文がとりあげられ、両者ともに「術後に抗生物質を投与してもしなくても、治癒に(結果に)有意差は認められなかったとしている。ただし片方の論文は患者の術後の不快感を和らげる意味ではやや有効であったと結論している。
いずれもアメリカの論文である。日本の実情と大きく異なるのは、彼らはクロールヘキシジンという薬物で粘膜消毒をしている点である。欧米では、必ずと言っていいほど使用されており、非常に有効な薬剤である。日本ではなぜ使われていないかというと、欧米人と同じ濃度で使用した場合、ショックが起きてしまう可能性があるからである。実際過去に、東京と和歌山でアナフィラキシーショックで救急車で搬送された例が報告されており、日本では欧米で使用されている濃度での使用は禁止となっている。日本の歯磨き粉に入っている場合もあるが、かなりの低濃度であり効果のほどは推して知るべしである。
日本の場合、このような事情で抗生物質の投与は耐性菌の問題はあるとはいえ、やむを得ないんではないかというのが、勉強会での結論であった。サイナスリフトで抗生剤をうまく使用することにより術後の腫脹をかなり抑えられることは経験的にある。もし使用しなければ、スイカのように顔が腫れるとの報告もある。科学的に検証したからといって、諸藩の事情をよく考えれば、うのみにできない論文も存在する。情報を得ることは重要だが、振り回されないようにすることも大事だと思う。
目次
コメント