歯科臨床の勉強をするために、しょっちゅう九州へ飛行機でいくようになって10年以上になる。私の利用する航空会社は一時期経営が危ぶまれていて、たまったマイレージがどうなってしまうかなどと自己中心的な心配をしていたものである。そんな中、旅客機への早い搭乗方法を採用すれば、時間もお金もセーブできるという話を英国経済紙The Economistの記事に見ることができた。
ステフェンさんというアメリカの天体物理学者(最近の天体物理学者は銀河のロマンを追いかける時間と同じくらい現実社会の問題を考えるのだという)が、より早く乗客を搭乗させる方法をコンピューターでシュミレーションして考えついたそうである。彼の計算によれば、航空会社が彼の方法を採用すれば、年間数百万ドル節約できるという。彼の論文はJournal of Air Transport Managementに投稿中だという。(学術誌にもいろいろあるんだな)
現状の問題点は、搭乗する時に通路側の乗客が先に座ってしまうと窓側の乗客のために席を立たねばならない事に尽きるという。また誰かが手荷物を収納している間は通路が詰まってしまうという点もある。彼の提唱する搭乗方法は、まず窓側の乗客を1列おきに搭乗させる。次に飛ばした列の窓側の乗客を搭乗させる。このプロセスを中間の座席、通路側の座席と続ける。こうすることにより乗客は席を立ったり、収納中に通路がふさがれることが無いという。
実際にステファン博士はボーイング757の模擬機体で検証したそうである。彼の提唱する方法は、従来の座席クラス別搭乗方法の半分の時間で搭乗が完了したとのことであった。
はじめは、彼の方法に興味を寄せる航空会社はなかったようだが、Southwest airlineなど一部の会社は考慮し始めているという。旅客機がターミナルに駐機するコストは毎分30ドルだそうである。1日に1500フライトと仮定し、1フライトに付き6分間短縮すれば年間1億ドル節約できるそうだ。苦境の航空業界にとってこの数字は天文学的だという。
私も窓側だと、搭乗の時や、トイレに行く時に通路側の人にいちいち「すみません」と言うのが嫌なので、富士山の上空からの壮大な眺めや、夜の町のあざやかな光の観賞を我慢して通路側に予約を取るのが常だ。しかし、こうした手法をとれば窓側になった時のストレスが多少減るのかな。航空会社もリストラを第一に考えるのではなくこうした工夫を取り入れてみるのも経営改善に役立つのではないだろうか・・・
医療現場も無駄を省く工夫を様々な角度から考えなければならないのは、航空業界と何ら変わりがない。(長谷川)
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