私の顎髭は、朝、電気カミソリでそっても、夕方にはブツブツ伸びてくる。それに加えて、問題は私の顎はえらが張っていることだ。角度的にカミソリがうまく当たらない個所がでてきて、どうしても剃り残しがでてしまうのだ。

大学生時代、総武線市川駅近くの床屋にかよっていたが、マスターのカミソリの技術は今から思えば最高であった。マスターが私の髭をそった後は、3日間髭が出てこないのだ。要するに究極の深ゾリである。剃った直後のひりひり感もない。マスターに聞いたら「風船にシェービングクリームをぬって、割らないようにカミソリを当てる訓練をするのです」と言っていた。当時の私の基準では床屋とはそういうものなのだと思っていた。床屋の基準がそこにあるものだとばかり思っていた。

ところがである。結婚して引っ越したり、また引っ越したりして、その都度、近所の床屋に行くのであるが、市川のマスターのように私の髭を的確に削げる者が一人もいないのだ。私のえらをカミソリ傷でギタギタにした挙句、軟膏を塗ってごまかす床屋。電気カミソリで剃りだす輩。時間はかけるのだが、後で鏡で確認するとちっとも剃れていない輩。なんという事だ。君らは風船でカミソリ技術の訓練をしていないのか・・・

しびれをきらして、自宅から1時間以上かけて市川のマスターのところへ数十年ぶりに行こうとしたが、店は無くなっていた。がちがちの職人というわけではない。きらびやかな経営技術があったわけでもない。そんじょそこらの床屋であった。しかし、技術は超一流であった。俺の髭をきちんと剃れるのは、彼しかいなかった。でも、店はつぶれた。原因はわからない。体調のせいだったかもしれないし、経営下手だったからかもしれない。しかし、どんなきらびやかな美容院より、老舗の床屋より、そのマスターは私にとっては最高だったのだ。

話変わって、歯医者の話。総義歯や咬合の大家である阿部晴彦先生のコメント。「歯医者とは技術を売る商売である」。にもかかわらず、イベントをやったり、キャンペーン等をやらなければ歯医者は生き残れない時代になったのか・・・経営下手でも技術は一流の歯医者と、技術は三流でも経営上手の歯医者とでは生き残れるのは・・・・どう転ぼうとも人生すべて自分の責任。両方とも一流を目指さなければならない時代だ。結局どの業界でも一緒だという当たり前の結論か・・・(長谷川)

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