症例14(上下総義歯)(東京大手町勤務歯科医の総義歯、全顎治療、咬合再構成ブログ)

 70代女性で神奈川県から電車で2時間かけて来院された方でした。何件かの歯科医院を回られ、地元の歯医者では入れ歯が歯茎にあたって痛いので何度も調整したり、埼玉県の歯科医院では新しく作ったりしたそうですが思わしくないとのことでした。東京の池袋の歯科医院ではインプラントオーバーデンチャー(インプラントの上に義歯がのっかり、外れにくいような装置をつける)を勧められたそうです(最後のスライドに私がかなり以前に行った例を載せておきます。現在は基本行っていません。)。治療用義歯(仮義歯)を作って歯茎の粘膜を調整し痛みがないこと、調子がいことを確認して、本義歯製作を行いました。最終義歯にはblade teethを採用して咀嚼効率の向上をはかり、歯茎色の床の部分は6気圧重合の合成樹脂を採用して強度をはかりました。最後に咀嚼効率を判定するガム(東京医科歯科大学とロッテで開発)で旧義歯と新義歯との比較を行い、咀嚼効率の向上が認められました。治療期間は約4か月、治療費は80万円でした。今後顎が痩せてきた時に裏打ちをし直す必要がでてきます。

高価な金属床義歯が入っていました。
口腔内です。
下顎のCTを撮影すると骨の断面が尖っています。義歯が当たって痛い原因と考えられました。
型取りをして石膏模型をつくり器具で分析します。この作業は後の人工歯を並べる位置情報を教えてくれます。
下顎石膏模型上に持参していただいた義歯を置いてみました。黒線が義歯の覆うべき範囲ですが、覆い足りない部分があることがわかります。痛みの原因と考えられました。
先ほどの分析結果を基に治療用義歯(仮義歯)の人工歯配列を行いました。赤い部分はワックス(蝋)です。
完成した治療用義歯。白い部分は粘膜調整剤といって歯茎の状態を整えるのと同時に型取り剤としての役目も果たします。
治療用義歯の調整が終わり、義歯を数時間預かって先ほどの粘膜調整材に石膏をついで最終模型を咬合器という機械に装着します。その他の情報も採取して最終義歯に反映させます。
最終義歯にはblade teethを採用しました。現在は金属ではなくジルコニアの白いものもあります。
blade teethの咀嚼効率が良いことをしめす図です。
ワックス(蝋)に最終義歯の人工歯を配列しました。
蝋を溶かして合成樹脂に置き換える作業ではイボカップという欧州製の機械で6気圧かけて重合しました。
通常(1気圧)重合との比較です。
最終義歯です。
最終義歯を装着したところです。
咀嚼効率を測定するガムです。
旧義歯と比較し新義歯の咀嚼効率向上が認められました。
1990年代に行ったインプラントオーバーデンチャーです。きちんとした総義歯がつくれるケースでは通常いらない処置です。
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