Kさん(女性)は4年ほど前に「口の中が何とかならないか」との事でお越しになりました。色々調べさせて頂き、治療計画を提示しましたが、予算的にも時間的にも厳しいとおっしゃられ、治療を断念した後来院が途絶えました。ところが、それから3年ほどたった去年に再びお見えになりました。「今回は予算的にも時間的にも都合がつけられそうなので治療してほしい」とおっしゃりました。
再度お口の中を拝見させて頂くと、奥歯が無くなって長年経過したことで咬み合わせが低くなっていました。上の前歯が下の前歯に突き上げられて、前方に広がるように倒され、それによって正中に隙間が生じていました。つまり、「出っ歯と隙っ歯が合わさった」ような状態でした。下の前歯は正面から見た時に大きく斜めに傾き、上から見た時の歯並びはジグザグ状態でした。元々入っていた銀歯は咬み合わせが低い状態に合わせて作られているため歯冠がかなり短い様子でした。これを本来の歯冠の長さに再現した仮歯に変えて矯正治療を開始しました。下顎の欠損にはインプラントを入れました。矯正開始から1年2か月で上顎の矯正装置を外しました。下顎は若干の微調整中です。
Kさんは60歳を超えていましたが、今や年齢に関係なく成人矯正は可能と考えられています。上顎だけとはいえ、装置を外した後、手鏡をしげしげ眺め、「綺麗になった」と笑顔で帰られました。歯医者冥利につきるこういった瞬間をできるだけ多く味わいたいものです。



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