抜けた穴

元当院の歯科衛生士のOさんから年賀状をいただいた。数年前に子育てのために退職された。出産直前まで持ち前の根情で、てきぱき動きまわった。Oさんは年齢的には若かったにもかかわらず、当院のチーフとして立派に仕事をしてくれた。歴代でも記憶に残る有能な人材だった。新卒で来たのだが、植野所長が辛抱強く育てあげ、Oさんも自ら育ったと言える。彼女がいなくなって、はじめて彼女の偉大さがわかる。いなくなった人の事をどうこう言っても仕方が無いのだが、その抜けた穴は大きい。
ブラッドピット主演のマネーボールという映画がある。メジャーリーグのオークランドアスレチックスを題材にした映画だ。私はまだ見ていないが、原作を読んでいる途中である。資金が無いチーム(アスレチックス)が無名の選手を育て、資金豊富なスター選手の集まるチーム(ニューヨークヤンキース)と対等に戦えた、その理由が物語風(といっても実話だが)に書かれている。無名だった選手が有名になって資金豊富な球団に引き抜かれていく。3人レギュラーを持っていかれ、誰もが翌年の成績低下を懸念する中、前年の成績を上回る様が描かれている。そこには明確な戦略、すなわちドラフト候補選手の他球団と違う選定基準、入団してからの育成についての考え方が示されていた。
組織の時間軸の中でリーダー不在状態は、業務遂行に少なからず影響するのは、どの世界でも一緒であろう。私は在職中のOさんに対しては何もしてあげられなかったが、最近私のブログを読んでくれ、「仕事がやれて勉強できることを、うらやましく思った」と書いてくれた。「わたしは、自分の子育てを通じて勉強していきます。」と結ばれていた。
決して自費率の高くない当院は、資金的にはアスレチックスと同じか?彼女からの思いがけない年賀状のおかげで、リーダーシップについて、スタッフ育成について考える年にしようと思うことができた。当院がアスレチックスのような成績を残すには、私が変わらないと駄目だと思った。(長谷川)

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