昨年に日本の歯科臨床界の重鎮である下川先生と言う方にご教授いただいた根管治療のコンセプトが、最近自分の臨床の中で徐々に成果を出しつつあるように思えてきた。つまり、かつての自分が治せなかったであろうケースが、治せるようになってきたのではないかと思えるようになってきた。下の症例も術前相談の時に「これを治せれば、大抵の症例は治せるよ」と下川先生に評されたケースだ。根管の中の感染が原因で顎骨の中に大きな膿の袋ができてしまったケースだが、4ヶ月後の今日、祈るような気持ちでレントゲンを撮った。黒かった部分にうっすらと白い骨稜が出現してきている様に見える(つまり治癒に向かっている)。根管治療は、日本の健康保険制度のもとでは、金銭的には報われない治療だが、生物学的には面白い治療だ。「明日のインプラントより今日の根管治療に全力を尽くせ」と、かっこよく決めたいが、インプラントもないと経営的には苦しいのが玉にきず。それでも手は抜けない。(長谷川)
写真左(術前)被せ物がしてある歯の根っこの先に大きな膿の袋が認められる(骨が溶けて円形に黒く見える部分)
写真右(根管治療4ヶ月後)骨が再生してきている様子が伺える
目次