手術ロボット

英国経済誌エコノミストから。

カラス(と言ってもCrowより大きいRaven(ワタリガラス)の事)というと中世の僧侶が不吉なものとするなど、一般には悪のイメージが強いが、ワシントン大学のあるグループはこのイメージを変えたいと思っている。その名も「カラス」という翼のような腕を備えた手術ロボットによって。
今日のロボット外科は、ダビンチシステムというロボット(下写真)がマーケットを支配している。通常の開腹手術よりも小さい穴から内視鏡のような形でロボットの腕に相当する部分を挿入し、医者が遠隔操作で操るというわけだ。通常の開腹手術に比べて、ダメージが少ない分、患者の回復も早い。およそ2,000のダビンチシステムが製造され、全世界で年間約200,000例の手術が行われている。
しかし、ダビンチシステムは完璧とは言い難い。500kg以上もあり、移動ができない。コストは180万ドルなので、一般の医療機関は手が出ない。専用のソフトも必要だ。
「カラス」はこれらの欠点を克服した。元々はカルフォルニア大学のグループがアメリカ陸軍のために戦場用のロボット外科のプロトタイプとして開発された。コンパクトで軽く、比較的安価(25万ドル)だ。さらに重要なことは特殊なソフトが必要無い事である。今年の2月からハーバード大学をはじめ全米で使用が始まっている。

歯科における外科処置は、ほっぺたやベロが邪魔で、部位によっては見づらく器具操作がやりずらい事がある。現状ではなんとかなっているし、価格の問題もあるので、こうしたロボットが歯科の世界で応用されるのは、まだ先のことだろう。ただ、従来のマイクロスコープ治療に加えて、こうした遠隔操作で処置ロボットを操作できれば、術者は無理な姿勢で診療しなくて済むし、術者の指よりも細いロボットのアームが口の中に入った方が患者さんとしても楽であろう。それなりに熟練は要するだろうけど。(長谷川)

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