左下奥歯の歯周組織再生療法後2年の患者さんがメンテナンスで来院されました。インプラントに挟まれた天然歯の周囲骨が再生し、術前に存在していた動揺も収まりました。レントゲン上でも改善が認められました。露出させた歯根面にエムドゲインという薬を塗布し、骨欠損のスペースに骨補填材と言われえる材料を填入して歯肉を縫合しました。骨欠損の深さがあっても幅が狭いケースは再生療法をやる上では好条件という10年近く前に受講したEPIC(evidence based periodontology and implantology course、二階堂正彦先生主催、清水宏康先生インストラクター)というセミナーで勉強させていただいた通りでした。やはり単根歯(根っこの数が一つで前歯や一部の小臼歯、根っこの数が二つ以上は複根歯と呼ばれ、奥歯や一部の小臼歯がそれにあたる)の再生療法は行いやすいため比較的成績が良いようです。このケースは手前のインプラント埋入と同時に行った下顎小臼歯の再生療法でした。小臼歯周囲骨欠損の手前が天然歯やインプラント上部構造がなかったため(視野を遮るものがなかったため)、さらに手術がやりやすかったと言えます。根分岐部病変と呼ばれる複根歯の又の部分にできる骨欠損の再生は未だに確実性に劣ると言われています。解剖学上複雑な形態をしていると見えずらいし、見えなければ廓清も困難になることを意味します。廓清が不十分であれば(きれいにできなければ)骨再生も十分期待できない事になります。今後、手技や材料の開発が進んでこれらへの対応レベルが向上し成績が上がることが望まれます。歯周病も数十年前は「それ以上悪くならないように」という概念のもとで治療が行われていたことが一般的だったことを考えると、再生療法は革命と言えると思います。ただ何でも治るわけではなく適応症が限られることと、インプラント埋入なんかよりはるかに繊細な技術が要求されることが問題とも言えます。今週末には二階堂先生が主催されている水道橋歯周病勉強会の月一回行われている定例会があり、イタリアの有名な歯周病科医であるコルトレーニ先生の論文を抄読します。この機会に今までの知識、情報の整理ができればと考えています。再生療法を望まれる患者さんも増える傾向にあり、適応症の判別、技術の向上、使用材料の選別等、常に新しい信頼性のある情報を得ながら、より良い結果が出せるように気を引き締めたいと思います。
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