紆余曲折(東京大手町勤務歯科医の総義歯、全顎治療ブログ)

先日総義歯セットしたばかりの患者さんが義歯調整で来院されました。自覚的な痛みがなく、調子が良いとのことでした。痛みがなくても粘膜に褥瘡ができていることがあります。褥瘡ができる前に製作工程を含めて調整しきることが大事なのですが、実際に使っていただいて、それでも義歯が当たってこないかはチェックする必要があります。今回は幸い褥瘡は認められませんでした。前の入れ歯が出っ歯気味だったので、今回の入れ歯は前歯を引っ込み気味にしました。勘ではなく、平均的な数値、顎の上下の3次元的位置関係(この場合は反対咬合)、以前の前歯の位置を模型上で記録し何ミリ引っ込めれば自然な顔貌が得られるかを検討しました。
横顔のイーライン「E-line(イーライン、エステティックライン)」(写真の赤線)と言われるラインがあります。E-lineとは人の側貌“profileプロファイル横顔”を評価する一つの基準とされ、このライン内に口唇が入ることが美しい口元とされています。具体的には、人の側貌において、鼻の先端とあごの先端を結んだ線をE-lineといい、美しい口元を持つ人は「上下の唇がこのラインに触れず、少し後ろにある」とされています。本ケースでも、その状態が達成できました。逆に口元が寂しくないか患者さんに伺ってみましたが、別に問題はないとの事でした。
前回はセンサーが組み込まれたフィルムを噛ませて計測する咬合力検査を行って、旧義歯と比べて新義歯の方が咬合力が大きい(70%増加)事が確認できました。また、最後に咀嚼効率検査を行いました。グミを20秒自由咀嚼してもらい、唾液中にグミから溶出するグルコース量を測定するもので100未満が咀嚼効率に問題があるとされています。以前の義歯に比べて30%咀嚼効率がアップしていました。今後は痛みが出たらご連絡いただけますかと申し上げて、ひとまず終了としました。
思い返せば、この患者さんとは1996年以来、担当医として関わらさせて頂いています。重度の歯周病で保存できる歯がほとんどなく、入れ歯の経験もない方でした。抜歯と同時に総入れ歯を入れなければならない状態でした。24年間で合計6回入れ歯を作った事になります。現役で大手町の大手企業本社にお勤めになっていた頃から終始穏やかな感じの方で、そういった性格的なこともあってか、また総義歯になった年齢が50代後半ということもあってか、義歯に対する受容は比較的スムーズでした。要するに「こんなの入れてられない」と言われたことは幸いありませんでした。
臨床だけでなく人生のロールモデルと仰いでいる阿部晴彦先生や上川明久先生のご指導のお陰で、この患者さんにもなんとかある程度貢献できたのかなと勝手に思っています。

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