救えない患者さんと救える患者さん

 症例集にあるように、全顎治療においては咬合再構成といって新たな咬み合わせをつくるのですが、咬合を大きく変えたケースでも今まで大抵患者さんには受け入れていただいています。ところが「咬み合わせがおかしい」からと何件もの歯科医院を渡り歩く患者さんがいます。もう既に多数の仮歯が入っているケースが多いです。私も何人か経験しましたが「あっちが高い、こっちが低い」とか「私の咬む位置はここだ」と言って毎回咬む位置が違うような方は、一人として上手くいったことはありません。他県から泊りがけで来院された方も複数いましたが結局救うことはできませんでした。

 入れ歯が合わないと何件もの歯科医院を渡り歩く患者さんがいます。私も何人か経験しましたが、この場合は上手くいく人といかない人がいます。入れ歯が受容できるかどうかは精神的なものも影響するので理屈通り作ったとしても患者さんに受け入れてもらえなければ勝負は負けです。

 今回の患者さんです。84歳の男性で今は日本にいますが、昔ニューヨークに20年住んでいたそうです。ニューヨークで作ってもらった義歯が壊れたので、日本で大学病院を含めて数件の歯科医院で新義歯を作ってもらったようなのですが、いずれも気に入らなかったそうです。上だけ作って欲しいとのことでしたが、変な段差があり、下の義歯も変えないと、おかしなかっこの義歯になってしまいます。「お金はかかってもいい。ただ下は気に入っているのでそのままにして欲しい。」とおっしゃりましたが、気に入っていたニューヨークの義歯を修理し、新義歯の製作はお断りしました。その後、下も作り変えてよいと言う事になったので、請け負うことにしました。義歯の場合は残存歯をいじらない限り、もし私の作る義歯が気に入らなくても元の義歯を使う事が出来ます。前から見て斜めに歪んでいる咬合平面を修正し、右側の異様な段差もなくした形で義歯を作製しました。幸いにも調子がいいとおっしゃっていただき、事なきを得ました。

 ニューヨークの義歯に固執される雰囲気があったので、正直なところゴールするまで結果がでるかどうか半信半疑でした。たまたま今回は上手くいったのかもしれませんが、どういう患者さんが治せて、どういう患者さんが自分には治せないのか、ある程度早い段階で判断して、ご迷惑をかけないようにしないといけません。と言ってもその判断は未だに簡単でない時があります。勉強を続け、経験を積み、技術が向上すれば、自信はつきますが、それが時として過信となり痛い思いをすることがあります。勉強と経験を積み続けるしかないのかもしれません。

術前の義歯を入れない状態とニューヨークの義歯を入れた状態

横から見たそれぞれの義歯の比較。豊洲で作った義歯は前歯が引っ込んでいるため口元が寂しいとの事でした。変な段差を修正しました。

上から見たそれぞれの義歯の比較

ニューヨークの義歯(上)と新製した義歯(下)。左右の傾きを修正しました。

下顎と合わせた状態。斜めに傾いていた咬合平面を修正しました。

術前の変な段差をなくし、咬合平面を真っ直ぐに修正しました。

術前後の口腔内写真と口元です。人前で笑えるようになったと喜んで頂けました。

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