懐疑が氷解?

開成高校の卒業アルバム表紙

私の高校の同級生YさんはK大医学部卒業後主に外科畑を歩まれ、その後大手保険会社で医療事故を扱う部門に勤務されていました。歯科でのインプラントにまつわる事故案件も多数見られてきたせいか、インプラントには当初懐疑的でした。

2014年、「左下が痛い」でお見えになり、該当する歯の歯根が割れていたので抜歯となりました。その後、咬み合わせの診断をして全顎治療の必要性について説明しましたが関心が無い様子でした。部分入れ歯を希望されましたので、おつくりして一旦終了となりました。

黄色矢印の歯の根が割れて痛みが出ていたので抜歯となりました。
上顎を調べてみると左右で傾きが違っており、この修正を含めて全顎治療を提示しましたが関心が無い様子でした。
全顎治療を希望されなかったので、この時の状態をキープしたまま、単純に部分入れ歯を装着しました。

それから4年後に「上の前歯が匂う」で来院されました。ブリッジの支柱になっていた前歯の歯根が割れて、隙間に細菌が入り匂いの原因となっていました。これも抜歯するしかありません。無くなったところに部分入れ歯を希望されたので装着しましたが、講演をされることが多く「これでは活舌が悪くて困る。上の前歯だけインプラントにして欲しい」とおっしゃいました。

とりあえず、見かけと発音を何とかしなければならないので仮のブリッジを装着しました。ただし、このままでは前歯の欠損部が長いので、この部での破損は免れません。

上の前歯部が長い欠損になってしまいました。
仮のプラスチックブリッジに補強のワイヤーを入れたものの、欠損部が長いため、ここが咬むとたわんでしまい破損は免れない状態でした。

「上の前歯だけインプラントにして欲しい」との事でしたが、それだと奥歯の踏ん張りがないので前歯に過剰な負担がかかり続けることになり、予後が心配なことをお伝えしました。奥歯にもインプラントを入れることによって前歯の負担が減り過剰となる事を避けられると説明したところ納得され、そうさせていただくこととなりました。

上の前歯にだけインプラントだと奥歯の踏ん張りがないため過剰な負荷がかかり、問題が起こる可能性が高いと考えられます。
奥歯にもインプラントを入れることにより前歯には本来あるべき負荷がかかることになり負担過剰を避ける事ができると考えられます。

最終形をイメージする操作を行いました。インプラントをどこに埋めるかも、このシミュレーションを基に決めていきました。こういった一連の操作は技工士さんではなく、すべて私が行っています。

顔貌と歯や顎の位置関係を咬合器と呼ばれる機械に反映させる作業
基準値に基づいて白い蝋で最終形をイメージします。

治療中に予想していた下顎のブリッジの支柱になっている歯の歯根が割れて抜歯となり、反対側と合わせてこちらもインプラントを入れました。

術前
黄色矢印で示す歯が割れて、抜歯となりました。
最終形です。

治療が終わり、定期検診の時に「ご飯が美味しく食べられる」と言って喜んでいただけました。インプラントに対して始めは懐疑的だったYさんも最後は満足していただけたようです。次々歯根が割れ、咬み合わせが崩壊していく過程にあったYさん。長期的にインプラントが咬み合わせの崩壊を食い止められるのかどうかを見守りたいと思います。

術前
術後
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