試行錯誤が少ない(?)設計図(東京大手町勤務歯科医の全顎治療ブログ)

以前のブログで掲載した治療途中ケースです(「一歩づつ」2020年2月20日掲載)。あれからさらに治療が進みました(写真上段の左が術前、右が現在)。上の残っていた歯はグラグラだったり、大きく下に伸びてきてしまったりして使える歯がないと診断し抜歯しました。その直後にあらかじめ用意していた治療用義歯を装着しました。下の残存歯はだいぶすり減って大きく変形していると診断し、被せもので形態回復(現在は仮歯の状態)、右(患者さんにとっての)下臼歯欠損部はインプラントで対応という治療方針です。
石膏模型で上の歯並びを正面から見て、それぞれの歯の位置を線で結ぶと、ひん曲がったりせずほぼ直線的で、かつ顔の正中線に対して直交するのが理想的(な咬合平面)です。この患者さんの場合、術前の患者さん自身の右側(写真上では左側)が大きく下がっているのがわかります(写真下段)。写真の下方にに写っている金属の板が顔の正中面に直交する面に相当します。南カリフォルニア大学で補綴学を学ばれ仙台で開業されている阿部晴彦先生が開発されたシンラシステムという器具を使用すると、こうしたことが客観的にわかります。この情報や他の標準的なデータと合わせて、左右前後のどちら側をどの程度補正すればいいかミリ単位でわかります。型取りして作った石膏模型だけでは、いくら眺めてもこうしたことはわかりません。患者さんの顔と比較しながら何度も試行錯誤するしかありません。
現在の状態において、下顎臼歯の間が空いているところはインプラントを埋入して骨結合を待っている最中です。この間に上の顎の形が変わってきたのと(抜歯直後から治癒してきているため)、ある程度咬めるようになってきたためか一度義歯が破損したことにより、上の治療用義歯を作り直すことにしました。
最終義歯製作時にはもっときれいな状態(抜歯した直後は穴が開いた状態ですが徐々に歯肉が粘膜が盛り上がって平らになります。抜歯後約8か月は待った方がいいと言われています。)での型取りが必要になります。下の歯はすべて仮歯なので、最終的な被せもの製作時には上顎義歯とのからみでもう一度形態を煮詰めなおす必要があると考えています。すなわち上下でしっかり効率的に咬ませるための作業です。上下の咬み合わせの高さの確認と必要であればその修正、上顎義歯の人工歯の位置、下顎仮歯の適切な形態を模索し、顔貌と調和し咀嚼効率の優れた最終的な補綴物(入れ歯や被せものなどの相称)を納得いくまで追求したいと思います。

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