苦節3年(東京大手町勤務歯科医のインプラント、サイナスリフト、全顎治療ブログ)

先日、フルマウスリコンストラクションのケースがようやく終わりました。患者さんは3年前に、なん件かの歯科医院を回られた後、当院にお越しになりました。主訴は「右上奥歯がなくなっているのをインプラントでやって欲しい」でした。レントゲンでは該当する部位にインプラントを埋入できるだけの骨がありませんでした。サイナスリフト(副鼻腔内造骨術)が必要でした。2002年に米国ミシガン大学で学んだこの技術には特別な思い入れがあります。骨が熟成するのに術後半年待ちますので、この処置を先に行い、インプラントを埋入する時期までの間に根管治療が必要な歯の治療などを行っていきました。
問題は咬合でした。平たく言ってしまうと「ひん曲がっている」状態でした。米国南カリフォルニア大学で補綴を学ばれ仙台で開業されている阿部晴彦先生が開発されたシンラシステムという器具を使って診断したところ、左右で前後的な傾斜が大きく異なっているのが判明しました。残っている歯は、ほとんどが補綴歯(被せものをしている歯)で患者さんもやり替えを希望されました。
カウンセリングには十分時間をかけて模型やスライドを駆使して患者さんにプレゼンテーションを行いました。説明が終わった後、「先生に会えて良かった」と言われました。「いや、まだ何もやってませんけど」と返しましたが、こちらの熱意が伝わったようでした。時間と手間をかけて治療方針と費用を説明しても、患者さんと折り合えなければ縁がなかったものと割り切るしかありません。他院に行かれて納得できる医療に出会い患者さんが満足されればそれでよいわけです。今回は患者さんが私を主治医として選んでいただいたので、情熱がふつふつと湧き上がってきました。
患者さんは仕事をされており、勤務先は大手町界隈ではなく電車で来られる方でした。治療開始から最初の1年は患者さんがなかなか時間が取れなくて進行は遅々としていました。サイナスリフトの手術の時は半日会社を休んで来られました。2年目から患者さんのスケジュールに余裕ができ治療が急速に進行しました。治療が終了した時は3年が経過していました。治療終了日には術前後の比較写真とレントゲンを患者さんにお渡ししました。ひずんだ咬合を完全に回復させることはできませんでしたが、私なりの答えを出せたのではないかと考えています。歯周病よりも咬合や歯根破折の要因で歯を失ってきた傾向にあると考え夜間のマウスピースも作成してお渡ししました。個々の歯で不安な要素もあり、今後の慎重な経過観察とトラブル発生時の早期対応が肝要です。

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