The boys in the boat

本書は、1936年ベルリンオリンピックボート競技エイト米国代表として派遣されたワシントン大学クルーの物語である。クルーの一人を主人公として、不遇とも思えるような生い立ち(当の本人はそう思っていないところが凄い)、彼らの大学生活、オリンピックまでの道のり、本番レース、卒業後の進路(あまりにもガタイがでかすぎて兵士として第二次世界大戦にはかりだされなかった)、死に至るまでが描かれている。ボート競技版炎のランナーとして、近々映画化もされるらしい。

ボート競技は古くからオリンピック種目にもなっているが、現在はマイナースポーツと言わざるを得ない。しかしアメリカでは1930年代はフットボールよりもボートのほうが花形競技であったらしい。主要な大学間のレースでは何万もの観客がおしよせ、レーススピードに合わせてコースと平行に走る観戦列車(関係者・来賓用)なるものもあったようだ。ボートの試合結果や誰がクルーに選ばれたとか、コーチの言動といった情報は地元紙に必ず掲載されていた。今では考えられないような人気であったようだ。

この本の著者はボートには一切関係ない人物である。しかし、たまたま後にこの本の主人公になる老人(元ワシントン大学ボート選手、ベルリン五輪出場)と会う機会があり、その話に感銘を受けて書いたノンフィクションである。アメリカでベストセラー中のトップになっているらしい。邦訳では「ヒトラーのオリンピックに挑んだ若者達」で出版されている。当時のワシントン大学ボート部の学生は偉いものだ。石切場や木こり等の過酷な肉体労働アルバイト(頑強なボート部員だからうってつけなのかもしれないが)で生活費や学費を賄いながら勉強している。勉強、ボートの練習、学費稼ぎ(遊ぶお金じゃない)のためのアルバイトをこなすのは、今では私の時代も含めて考えられない。オリンピック決勝での手に汗握るレース展開、信じられないような感動のゴールシーンを映像なしの文章のみで、これだけ表現できるのかと、一流の作家のすごさに感動さえする。と、偉そうには言うものの、どうしてもわからないところは邦訳に頼らざるを得なかった。(後でYoutubeで動画を探し当てることができた。)

チームワークとは何なのか、個人が集団にどう貢献するのか。まあ私ども医療機関も一つのチームではあるが、この話が参考になるかどうかはともかく、オリンピックには出なかったけれど国際大会には出場したことがあり、結構真剣にボートに取り組んでいた者としては、大いに楽しめる本だった。

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