60代女性。「私、そちらのホームページの症例集にでていたようにきれいになるかしら?」と言ってお見えになった方です。歯医者が「どうしてここまでほっといたの」と患者さんに怒っていたナンセンスな時代がありましたが、そんなこと言ったって何の解決にもならないどころか、せっかく勇気を持って来院していただいた方の気持ちをへし折る事にもなりかねません。それはともかく、こうしたケースを目にすると燃えますね。創造意欲を掻き立てられます。矯正の提案は却下されましたが、当初怖がっていらしたインプラントやサイナスリフトを行い、根管治療を行い、現在仮歯を収めるところまでこぎつけました。私が抜きたかった歯でも「痛くないから、とりあえず残してみてくれ」というご希望を取り入れ、長期に持ちそうもない状態でしたが敢えて残して経過観察中です。使えるうちは、仮歯の支えとして適切な咬み合わせの模索をする上で今のところ役立ってくれています。患者さんの使い心地に何度も耳を傾けながら仮歯の形態を変えていきました。ここまでついてきていただいた患者さんには感謝しかありません。ゴールまでは、まだ数か月はかかるでしょう。予期せぬトラブルが起こるのも臨床ですのであり得ます。サッカーワールドカップ最終予選(ホームでサウジアラビアに勝った時点)の日本代表じゃないですが、まだ何も決まったわけではありません。最終結果を出したわけではありません。選手が次の試合の準備に切り替えるのと同じように、次の処置の準備(資料の見直し等)をしたいと思います。最終的な補綴が終わって意味をもちはじめ、それが長期にメンテナンスできて成功したと言えるのですから。
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